2006年04月18日

●技術倫理

先日、ひまじんと皐月賞から帰るときに話題に上った技術倫理について、エッセイというには少々まとまりがなさすぎるので雑記という形で書いてみることに。

戦後の日本は特にそうですが、科学技術の急速な高度化とともに、製造工程や製品は消費者にとって、あるいは製造者にとってさえブラックボックス化しました。それに加えて大量生産・大量消費。これではブラックボックスの中に思わぬ欠陥があった場合には、同じ欠陥による同種の被害が拡大してしまいます。
1994年には製造物責任法(PL法)が公布され翌年から施行されていますが、これも現状では十分とは言えません。科学技術発展の加速度に、空気摩擦ほどの抑止力を加えただけ。したがって、法律で規制するだけではなく、もっとも製造物の現場に技術者一人一人が何らかの配慮をしなくてはいけない、とは当然の帰結でしょう。そこでまずは必要とされているのが「技術倫理」というわけです。

また国際的には、2000年からすでにAPECエンジニアの登録が始まっています。簡単に言うと、これさえ持っていれば大体どこの国でも国内技術者と同じように振舞えるという、技術者の宝刀です。しかし逆に言えば、これを持っていない技術者は諸外国で満足に技術者として振舞えないということです。いかに国内でキャリアを積んだ凄腕の技術者でも、例えば外国での建設作業でたいして年季もない若造――ただしAPECエンジニアの資格を持っている――の監督下におかれてしまうのです。これは由々しき事態。
さて、このAPECエンジニア資格は「技術倫理」を必須としています。しかしわが国では長い間、工学部のカリキュラムから時間の都合上などといって倫理教育を排除してきました。当然、技術倫理などという科目も多くの工学部では存在していません。2000年のAPECエンジニア登録開始を受けてようやく慌てたか最近ではちらほらと技術倫理を必修とする工学部も現れはじめたようですが、まだまだ認識のレベルは低い。技術力とのつりあいを取りつつ、もっと技術倫理にも焦点を当てていく必要があるでしょう。

「倫理が技術に追いついていない」。ひまじんから聞いた教授の話ではそういうことでしたけれど、まさにその通りなのかもしれません。ただし位置として追いついていないというより、前述のように加速度・力として「つりあっていない」と言った方が妥当かも、なんて勝手に思いつつ。
日本には特に、そういう面があるのは確かです。

コメント

ウチでは「創造と倫理」って科目があるんですが
4年必修らしい 必修ってのは知らなかった。
そこで倫理に関することを今よりもうちょっと突っ込んで講義してくれるみたいですね。
技術倫理系の話はもうお終いみたいですが、

一言だと「責任」を取れる技術者たれ

って内容でした。
ちなみに教授じゃなくて助教授らしい。

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