2006年11月04日

●加納朋子『ななつのこ』

創元推理文庫/310p

ここでちょっとブレイク、というわけで岩波文庫を離れて友人に借りた一冊。文庫は推理文庫、ジャンルはミステリーでありながら、殺人やら爆発やらとはまったく無縁のほのぼのとしたストーリーが展開するふしぎな本。
主人公の女子大生・駒子が『ななつのこ』の作者にファンレターを出すところから物語ははじまる。駒子は日常生活の中で見つけたちょっとした「謎」を起ったとおりに、時には自分の推理を交えて、作家に送るファンレターに添える。すると作家は返事の中でその謎を鮮やかに解いて見せる。そんなやりとりが続くうちに、次第に物語は思わぬ方向へ――。

ここから先は勿論、ネタバレになってしまうので語らない。
この話を魅力的にしているのは、ひとつに、題材となる「謎」の選び方にあると思う。謎は一見すると、誰かが何らかの悪意をもって企てた行為か、よからぬことを画策する不審な行為の片鱗のように見える。しかしいざ謎解きが終わってみると、なんだそんなことだったのか、と思わず表情が緩んでしまうような愉快な"真相"が明らかになるのである。大掛かりなトリックがあるわけでもない、悪意をもった犯人がいるわけでもない、ただ謎が明らかになるたびに心がほんのすこし暖かくなる、そんなミステリー。ブレイクには上々でした。

21171p/42195p

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