2006年11月04日

●ルソー『社会契約論』

岩波文庫・青/236p

社会契約によって人間が失うもの、それは彼の自然的自由と、彼の気をひき、しかも彼が手に入れることのできる一切についての無制限の権利であり、人間が獲得するもの、それは市民的自由と、彼の持っているもの一切についての所有権である。

社会契約論がどんな意図をもって、どのような経緯で、何を言わんとしているかについてはいまさらここで解説するまでもないと思われるが、あえて社会契約とは何かをひとことで示すとすれば、上の箇所の引用が最も妥当であろう。
本能が正義になり、欲望が権利になる、この野性から理性への変化が社会契約である。まさにこの契約によって人間は「それまでは自分のことだけを考えていたものが、それまでとは違った原理で動くようになり、自分の好みに聞くまえに理性に相談しなければならなくなる」のである。各人がこの原理にしたがって行動するところのものが、社会と呼ばれるものだ。

イギリスの学者、キングスレイ・マーチンは、人間の精神に最も大きな影響を与えた本として『聖書』『資本論』とこの『社会契約説』のみっつを挙げているという。分量的には前の二つに遥かに劣る『社会契約説』がしっかりと席を占めているのを見るにつけても、いかにこの著作がその薄さからは想像もつかぬほどの豊富な内容を持つ名著であるかがわかる。

11月の課題図書にしようかとさえ思ったが、それはさすがにやめておくことにする。
しかし読んで決して損はないし、なにより上に言ったように薄いので、何かの暇に是非呼んで欲しいと思う。

私も人間不平等起源論はともかく、エミールはいつか読まねばなるまい。

21608p/42195p

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