2006年06月24日

●『西洋哲学史』 -理性の運命と可能性-

昭和堂/435p

ソクラテス、プラトンからデリダ、ドゥルーズに至るまで、西洋哲学の歴史を一望できる書。かなりボリュームがあるが、解説が丁寧で読みやすい。さらに、ひとりひとりの哲学者の思想が手抜きなく念入りに考察&解説されているのも評価◎。教科書というよりも読み物として読める哲学史だと思う。

具体的な構成としては、時代区分をジルソン(Etienne Gilson, 1884-1978)にしたがって「古代」「中世」「近世」「現代」としている。古代は哲学の祖タレスなどミレトス派からはじめフォアゾクラティカー達の「万物のアルケー」追及を概観した後、ソクラテス、プラトン、アリストテレスを通ってローマ帝政期の新プラトン派に締める。中世は主にアウグスティヌスとトマス・アクィナスの二人の解説に尽きる。その後、ルネッサンスを契機としたデカルトなどの大陸合理論をもって近世の始まりとし、大陸合理論、イギリス経験論、そしてドイツ観念論がヘーゲルにおいて完成するまでを見ていく。最後にそれ以降を広く現代とし、ショウペンハウエル、キェルケゴール、ニーチェといった倫理の教科書でも馴染み深い方々の哲学を見ながら、フッサール、ハイデガー、サルトル、メルロ=ポンティ等の現象学、フォイエルバッハ、マルクス等の唯物論、フレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタイン等の分析哲学、さらにはポスト構造主義として現代でもお馴染みのフーコー、デリダなどの哲学を見ていくという流れになっている。

こうしてみると、歴史上のいわゆる著名な哲学者の名前は大体挙がっているようで、(分厚い分当たり前といえば当たり前だが)これ一冊で西洋哲学の「有名どころ」をざっと見ていく分には十分不足がない。

こういうまとまった哲学「史」の本を読むことってあんまりないけれど、やっぱり原著(訳本)を読んでる人の解説と読んでない人の解説では理解度にも読みやすさにも雲泥の差がある。訳じゃあ本当に原著を読んだとはいえないとかなんとかいう人もいるけど、そう言わずにやはりその人が書いた「内容」そのものを一度は見ておくのが、その後に「解説」を受け取るための正しい手続きのような気がする。思想なんだから、原語にそこまで拘らなくてもいいんじゃないだろうか。なんて、訳本しか読めない人の浅はかな考えだろうか。

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